(5) 尿路結石 メタボが誘発
「尿路結石はメタボが誘発」
尿路結石になると、出産時の痛みすら上回るほどの激痛に見舞われるという。痛みの引き金となる小さな石が腎臓内にできる根本原因はこれまでよく分からなかったが、最近、メタポリック症候群と同様に、乱れた食生活と深く関係しているとの研究報告が注目されている。
8月のある日、少し遅い昼食をとった記者(30)はへその下あたりの腹部に軽い痛みを感じた。時間がたつにつれ痛みがじわじわと増し、午後6時ごろには歩くのも苦しいほどに強まった。
帰宅後、横になっても苦しさは変わらない。横腹にも痛みか走る。救急車を呼ぶのはためらい、近くの病院に電話をして水分を取るようアドバイスをもらったが、吐き気でほとんど何も飲むことができない。芋虫のように布団の上をはいずり回り、一睡もできないまま翌朝病院に駆け込んだ。コンピューター断層撮影装置(CT)などいくつかの検査を受け、[おそらく尿路結石だろう」との診断結果になった。
尿路結石は腎臓でできた結石が体外に排出される途中で詰まって起きる。ぼうこうや尿道などで詰まるケースもあるが、尿管で起きる例が圧倒的に多い。結石が詰まると、尿は排出されにくくなり腎臓に過剰にたまっていく。やがて腎臓が腫れ、激痛に見舞われる。
「尿路結石は急性心筋梗塞(こうそく)、急性すい炎と並んで痛みの強い三大疾患」と言われる。ホルモン分泌との関係もあり、女性より男性に多く、30〜50歳で起きやすい病気だという。
「生活習慣病の一種」…確かに記者にも心当たりがある。酒を毎日のように飲み、食事の時間も不規則で朝食も抜きがち。今春には会社の健康診断で初めてメタボリック症候群との判定も受けた。
尿路結石かメタボリック症候群と関連するとの研究結果も出ている。
再発リスク1.3倍
2005年に全国の病院から得られた尿路結石患者約35000入の疫学調査の結果を詳しく分析した結果、メタポリック症候群の人はそうでない人に比べて尿路結石を再発するリスクが1.3倍だった。
「(肥満の目安となる)BMI(体重÷身長÷身長で算出する値)で25以上の入は発症リスクが約2割増える」と肥満の人に注意を促す。
結石は尿中のカルシウムやシュウ酸が結晶化して腎臓内にできる。食事が偏ると尿が酸性状態になり、結晶ができやすくなる。肉類やアルコール類は尿酸値を上げ、尿を酸性化する。食事後に結石となる成分が尿として排出されるのは2〜4時間後がピークとされ、排出前に寝ると結石は成長しやすい。野菜をよく食べるなど尿をアルカリ性に近づけることが予防につながる。
実際に尿路結石になってしまったらどうすればよいのか。結石の大きさか数mmと小さいときは痛み止めを打つなど対症療法でかわしながら、自然に体外に排出されるのを待つ。一般的には1cm以上になると治療が必要となる。
衝撃波で破壊
「8割の患者は衝撃波で結石を破壊する『ESWL』が適用される」〜ESWLは体の外から衝撃波をあてるので麻酔の必要もなく、日帰り処置も可能。治療台に横になっている時間も約1時間ですみ、副作用の心配もほとんどないとされる。
尿道から内祝鏡を入れてレーザーで破壊する治療法「TUL」も広がりつつある。「結石が尿管の下の方にある場合はTULの方が治療成績がいい]。ただ、治療に伴う痛みは激しく麻酔が必要で、数日間入院しなければならない。
「尿路結石は激痛の割には、良性の疾患といえる」。結石を体外に出してしまえば特に何の問題もなくなるためだ。
とはいえ、できればあの激痛だけはもう二度と経験したくない。記者も心機一転、メタボリック症候群の解消とともに、尿路結石予防に励もうと心に決めた。
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